Science サイエンス誌の地震調査

サイエンス誌の記事を種田様に翻訳していただきましたので掲載します。

Displacement Above the Hypocenter of the 2011 Tohoku-Oki Earthquake


Science サイエンス 2011年5月19日 (原文=英文)を和訳  訳者:種田泰久

2011年3月11日に日本の北東部東北地方沖合いのプレート境界で大規模なプレート内地震が発生した。余震の分布から推定される震源地域は沖合いで約500kmの長さで200kmの幅に広がっている(I)
この地震発生のメカニズムを理解するために種々の調査が進行中である。 例えば、国土地理院(GSI) は高密度の衛星利用測位システム(GPS)のネットワーク(2)に基づいて陸上における 地震発生時の変位を報告している。最大の変位は牡鹿半島(図1) で検出されており東南東方向に約5メートルまた下方に約1メートルに達している。彼らはまた観測された変位からプレート境界上のズレの分布を見積もったところ最大のズレは震源地(2)近くで約24メートルであった。
牡鹿半島は地震の中心から約130km離れた位置にあるので、本事象の震源のメカニズムをよりよく律測するためには、さらに震源地域に近い所、即ち海底で地殻変動を測量する方がより望ましい。
沖合いでの地殻変動をモニターするために我々はGPSと音響技術を組み合わせて(3-5)(図S1)海底の測地観測を実施している。5箇所の海底の参考ポイントは2000年から2004年の間に年平均3回実施されたキャンペーン観測で東北地方から離れたところに設置された(図1)。
今回の地震の以前に最新の観測が行われたのは2010年11月にKAMSとKAMNであり、また2011年2月にMYGI,MYGW及びFUKUであった。
今回の地震の後、我々は3月28日から4月5日までの期間にこれ等の場所で観測を行った(6)。
地震の前と後の比較をすると、地震発生時の変位は東南東に向って5~24m、そして上方に向って-0.8~3mであった(図1,表S1)。特に震央に近いMYGIにおいて我々は東南東方面に約24mかつ上方に約3mの巨大な地震発生時の変位を検出した。地震後の観測のエラーは通常のキャンペーンでの観測エラー(数cm程度)に比べて幾分か大きい(50~60cm程度)(6)。観測された変位は本震後約20日間の地震後の変動を含んでいる。それらはまた前震と余震による地震発生時の変位も含んでおり(I)、そのうちの幾つかはこれ等の現場に影響を与えるに十分大きい。しかしながらそれらの各々によって引き起こされた変位は精々数10cmであり、本震による地震発生時に起きたと思われるものを除けば、全てを合わせても1m以下だと見積もられている。それゆえにこれ等のデータは巨大な地震発生時の変動及びその震源地域の丁度上で起きた本震による空間変化を描いている。
MYGIにおける水平方向の動きは陸上で検出されたものより4倍以上も大きく、陸地の計測から推定されるプレート境界上の最大のズレに殆ど等しい(2)。
更には、震央の約70km 北東に位置するKAMSにおける水平移動はMYGIと同じ大きさである。それ故に地震発生時の変位が20mよりも大きな地域は少なくとも70km以上に及ぶものと合理的に解釈される。これ等の結果が示してくれるのは、海溝近くのプレート境界上のズレが陸地データ(2)によって最大限20~30mレベルを超えたものと推定される。何故ならばプレート境界上のズレは海底の移動よりずっと大きいからである。
また、MTGIとMYGWにおける変位の上下の部分は異極性を示しているということは明らかである。陸地のデータが地盤沈下(2)を表しているので、地震の時の上方プレートの反発から想定される下方から上方への垂直変位の極性反転が沖合いで起きた。そうして、無変位に相当する蝶番ラインがMYGWの東側に位置している。
わずか5箇所の観測現場で、我々は震源のメカニズムの詳細な特性を律則することは出来ないかもしれないが、この調査によって沖合いで得られた地震発生時の変位が陸地のデータだけよりも、この地震のための断層モデルを推定するのにははるかに優れている規則を提供してくれるであろう。

(A)水平方向変位(B)垂直方向変位

地震発生による地形の変位

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